作品を研究化、論文の作品化(VRSJ OS/ミートアップの話を整理)
文化や社会的側面を持つアートやエンタテインメントを芸術学やメディア学といった人文系の観点から評価する試みは行われてきている。一方で、xRやロボット技術などその当時の最新鋭のテクノロジーと密接に絡んだアート・エンタテインメント作品をどのように評価するかや、理工学系の研究としてどう成立させるのかについて、確固たる評価基準や研究の方法論が確立されているわけではない。
こうした点から、アート・エンタテインメント作品を制作する過程やその後において、その成果や貢献を整理し、学術論文として発表することに障壁を感じる研究者や学生は少なくない。このような障壁を乗り越えるためには、体系的な方法論だけでなく具体的な事例を示すことが助けになると考える。
本章では、アート+エンタテインメント研究委員会の幹事のメンバー(当時)が自らの研究を俯瞰して導き出した方法論や、アート・エンタテインメント作品として側面を持つ研究活動の事例について紹介する。
なお、本章の内容は、VR学会2019年大会での委員会企画オーガナイズドセッションでの発表をもとにしている。こちらの詳しい内容はA+E研究委員会のwebを参照されたい。
エンタテインメントコンピューティングやダンス情報処理を専門とする土田氏は、ダンスや身体表現などのパフォーマンス拡張に主眼を置いた研究のプロセスを、「デザイン・実装」「分析・評価」「パフォーマンス」の大きく三つに分けた。
パフォーマンス拡張の研究プロセス
「デザイン・実装 → パフォーマンス → 分析・評価」(図の右回り)の順で実施した研究として「移動ロボットを用いたダンスパフォーマンス環境の構築」がある[Tsuchida et al., 2016]。この研究ではまず既存のデバイスやアプリケーションを用いて、コンセプトのイメージを具体化するとともに、具体化したイメージを実現するシステムを構築した。次に、実際にさまざまなパフォーマーとコラボレーションしながら、複数のパフォーマンス作品を作成した。そして移動ロボットを用いたパフォーマンスを作成可能なシステムをダンサーの方々に利用してもらい、パフォーマンスの作成過程を観察することで、今後一般的なシステムとして普及させる上で必要となるシステムの設計指針について議論し、論文としてまとめている。
(研究を説明 or 代表する写真)